本研究は、中国社会主義経済体制、とりわけ計画経済期(1949-1978年)の財政金融制度の構造と作用を通時的および体制内の地域間比較という2つの視点から解明することを目的とする。その上で最も基本的な資料は、中国各省・市・県の「地方志」と呼ばれる地方財政金融関係資料であり、これらの系統的な収集・整理が最も肝要である。そこで初年度にあたる本年度は、各省・直轄市レベル(実効支配していない台湾省を除く全国22省、5の自治区、北京・上海・天津・重慶の4の直轄市)の財政金融関係資料を網羅的に収集することを目標に活動を進め、結果としてその大半を購入あるいは複写することができた。未入手のものについてもすでに入手見通しがついており、通時的・地域間相互比較分析を全面的に行う基盤を形成できたと言える。 また、上記の資料収集活動の一環として、北京の中国国家図書館、中国社会科学院経済研究所図書館、および日本国内では有数の中国経済史関係蔵書を誇る京都大学経済学研究科図書館等での集中的な資料調査を行った。その過程において、当時の中央政府機関の内部閲覧雑誌である『中央財政公報』や定期刊行物『中国金融』など貴重な資料を入手することができた。これらが利用可能になることにより、中心となる地方財政金融分析に加えて中央政府の財政政策分析も進展が期待され、より重層的に研究を展開できる可能性が広がった。 以上の本年度における系統的な地方財政金融資料収集の成功および新史料の発見は、次年度以降に予定されている相互比較分析の重要な基礎となるであろう。
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