本研究は、中国社会主義経済体制、とりわけ計画経済期(1949-1978年)の財政金融制度の構造と作用を通時的および体制内の地域間比較という2つの視点から解明することを目的としている。初年度にあたる昨年度には、本研究の基本的な資料である中国各省・市・県の在地レベルでの地方財政金融関係資料の系統的な収集・整理につとめ、一定の成果を挙げた。 本年度は、前年度に引き続き地方レベルの財政金融関係資料の系統的な収集・整理を進めたほか、中国上海の上海市档案館および上海図書館において上海市および周辺他地域の財政金融に関する資料調査を行い、補足的な資料を得た。また昨年度収集した中央政府機関の関係資料等の整理を進め、通時的・地域間相互比較分析を全面的に行う基盤を整えた。 その一方、これまでの研究成果および基本的なフレームワークを発信しレスポンスを確認する活動の一環として、2010年3月に開催されたAssociation for Asian Studies Annual Meeting 2010にて"The Socialist Transformation and Changes in the Fiscal Structure of Shanghai Municipality"と題する報告を行った。当日のディスカッションでは、経済体制の変動と財政の関係について中国・台湾・アメリカの関連する研究者と意見交換を行い、今後の研究計画の進行、および対外発信の方法という両面に関して有益な示唆を受けた。 以上の本年度における系統的な資料収集の成功および対外発信によるフィードバックは、最終年度にあたる平成22年度に予定されている地域横断的・通時的な相互比較分析および研究成果の最終的な発表の重要な基礎となるであろう。
|