研究概要 |
当該研究の最大の目的は、近代的製造業が必要とする質・量の労働力・長期資金といった生産要素の需給を調整する取引制度が、植民地期から計画経済期に至る20世紀前半のインドにおいてどのように生成したかを、当時の3大近代的製造業(ジュート紡績業、綿紡績業、鉄鋼業)を舞台に、企業レベルの史料に基づいて明らかにすることである。 当該研究の最終年度である本年度は、論文執筆と著書執筆を引き続き続けるとともに、執筆した論文をもとに国内外の研究者と議論を行い、かつ必要とあれば追加の史料収集を行うこと、を研究目的とした。 論文・著書の執筆に関しては、(1)ジュート、綿紡績業、鉄鋼業という植民地期インドの3大近代的製造業の長期資金調達のありようを、個別企業の財務データをもとに分析し、その結果を研究会発表用の論文として執筆した。(2)また、1920年代後半、3大近代的製造業を中心とする主要製造業で労務管理の失敗から大規模なストライキが生じた背景を、特にタタ鉄鋼所の企業保有史料に基づき分析し、研究会発表用の論文として執筆した。(3)最後に、19世紀後半インドで生成した生産要素取引制度が20世紀前半インドの生産要素取引制度生成の基礎を構築した。この19世紀後半生成した生産要素取引制度のありようを、主に既存の研究に即し整理した研究会発表用論文を執筆した。なお、これまで執筆してきたタタ鉄鋼所に関する論文をまとめた著書は、引き続き執筆作業を続けている。 国内外の研究者との議論に関しては、学習院大学経済学部での研究会参加者、イギリスWarwick大学経済学部のインド経済史家Gupta博士,Cambridge大学トリニティ・カレッジのWashbrook博士、およびインド・カルカッタ開発研究所所長のBagchi教授から、貴重なコメントをいただいた。 最後に、史料収集であるが、2011年7月から12月まで本務校から長期出張の機会をいただき、主にイギリス・ロンドンの大英図書館において集中した史料調査をおこなった。
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