平成18年度・19年度から両大戦間期イングランド銀行による中央銀行創設・改革運動の研究を行ってきたが、平成20年度・21年度は同運動において中心的役割を果たしたオットー・ニーマイヤーの活動に焦点を当てて研究を行った。予定通り英国国立公文書館(Public Record Office)とイングランド銀行文書館(Bank of England Archives)での史料収集を行い、これらの機関で入手したニーマイヤーの活動に関する一次史料(電報、手紙、報告書など)を読解・分析することによって、ニーマイヤーがニュージーランドやアルゼンチンにおける中央銀行創設において果たした役割を明らかにしようと試みた。より具体的にのべると、ニーマイヤーが現地政府に提出した報告書を検討し、実際にその内容に沿った形でニュージーランド中央銀行やアルゼンチン中央銀行が創設されたのかを検討した。その結果、それらの中央銀行の特質・機能はニーマイヤーの志向した中央銀行とは異なるものであったことが明らかとなった。たとえば、ニーマイヤーがもっとも重視した「中央銀行の政府からの独立性」という原則は両行において採用されず、それらの中央銀行はいわば政府の付属機関として創設されることとなった。以上のことを一次史料を用いて実証的に明らかにすることによって従来の解釈に修正を加えることができた。本研究はニュージーランドとアルゼンチンの個別研究にとどまったが、これを皮切りにさらなる個別研究を積み上げ、両大戦間期イングランド銀行の中央銀行創設・改革運動の全体像を把握し著書にまとめたいと考えている。
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