研究概要 |
本年度は, (1) 地域のイノベーションシステムにおける協働起業家の役割に関する国内外の先行研究を厳密にサーベイし, 分析の理論視角の構築をはかるとともに, (2) 福井県鯖江地域を中心に, 福岡県大川地域, 旭川地域, オウル地域等において, イノベーションシステムの実態を資料分析およびフィールドワークなどの定性的調査手法により把握につとめた。 調査研究の結果の一部については, 1篇の研究ノート(『産業集秋における技術イノベーションの実現過程-鯖江眼鏡枠産地のフィールド調査を通した予備的考察-』)として発表している。本稿では,産業集積内での技術イノベーションの文脈において, 多様なバックグラウンドを備える行為主体間でいかなる相互作用があるかを記述するとともに, 産業集積において技術イノベーションが実現される過程の特徴の整理を試みた。 現時点では, これまでの先行研究のサーベイおよびフィールド調査にもとづき, (1) 地域においてイノベーションが実現される過程での協働現象そのものの観察を通して, 実態をより反映した協働起業家概念の操作的定義を開発する必要がある, (2) 地域におけるイノベーションの現状や問題点に関して, 地域のイノベーションシステムを構成する行為者間での認識の違いが, 競争行動や協調行動に与える影響を十分に考慮する必要がある, の大きく2点の研究課題を見いだしている。現在, レビューアーティクルの作成とともに, 今年度に収集したパイロット調査で得た定性データに関する2篇のディスカッションペーパーを執筆中である。
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