研究概要 |
今年度は,(1)フィールドワークを通して追加的な定性的なデータの収集と分析用データセットの作成および(2)主にグラウンデッドセオリーアプローチの手法を用いた理論的枠組みの構築の2つの研究作業を実施した。 第1のフィールドワークに関しては,前年度までに調査を実施した産業集積地から,すでに多くのインタビュイーからの協力を得ることができ,収集データの分析において決定的に重要な役割を果たす産地特有のコンテクストをリッチに記述可能であると判断された,福井県鯖江地域の眼鏡枠産地および福岡県大川地域の木製インテリア産地を選定し,実施された。これら2つの地域に関してより包括的なデータセットを作成し,分析の主要な対象とした。 第2の理論的枠組みの構築に関しては,(1)データの帰納的コーディングと演繹的なコーディングを併用し,概念モデルの探索をすすめるとともに,(2)発見事実の理論的な意味や現象の背後で作動するメカニズムを捉え理解するために有用と思われる分析視角を,組織論分野にとらわれずに社会学・政治学などの関連領域からも適宜参照しつつデータの分析が実施された。実際には,一次的に入手した定性的なデータと各種の定量的なデータとをつきあわせる過程で数多く見出される理解困難なギャップをひとつひとつ拾い上げ,それぞれのギャップの背後にあるリアリティを丁寧に解きほぐす作業に,多くの研究期間が費消された。現在,データの最終的な分析作業をすすめるとともに,7月に予定されているワークショップでの報告に向けて論文の執筆に着手している。
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