エネルギー多消費機器のうち、照明機器及びテレビに関して、環境制約下におけるイノベーション・プロセスの研究を行った。具体的には、照明機器を事例として、ケーススタディー、特許分析を行った。日米におけるイノベーション・プロセスの違いを明らかにするために、米国の特許については、特許庁が作成した米国特許明細和文抄録テキストデータを加工し、新たにデータベースを構築して分析した。照明機器については、人感センサーにより人が部屋にいるときだけ点く機能などの「エネルギーロス削減技術」を取り上げた。テレビ(液晶、プラズマ)については、部屋の明るさに合わせてテレビの明るさも変わる機能などの「エネルギーロス削減技術」を分析した。これらの分析結果及び平成20年度の研究成果に基づき、環境制約がイノベーションに与える影響について、企業経営者、環境規制、環境ニーズの3つのルートを経由していること、また、消費者の「環境負荷低減に貢献したい」という環境ニーズに影響されてイノベーションが活発化したことを実証的に明らかにした。 エネルギー多消費機器(エアコン、冷蔵庫、照明機器、テレビ)の環境イノベーションの分析結果を踏まえると、環境イノベーションを促進させるためには、いまだ未熟であるが、ようやく環境イノベーション促進の効果を生み出してきた「環境ニーズ」のさらなる増大と具体化を進めることが有効であると言えよう。例えば、環境制約が厳しくなる将来の「日本のライフスタイル」のビジョンを国主導で企業や国民が協力して描き、共有することによって、需要側である国民の環境ニーズをさらに拡大させることにつながるものと考えられる。
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