これまでの医療機関経営、特に医療連携に関する先行研究をレビューすると、その多くが医師など医療従事者によるものであった。そこで本研究では、経営学・マーケティングの視点から研究を進め、21年度は定量調査のための仮説設定、質問票の作成、プリテストを行った。 これを受けて、22年度は医療機関を対象とした質問票調査を行った。しかし、統計分析の結果はあまりよいものではなかった。仮説は連携する医療機関の医師同士のコミュニケーションに関するものを多く含んでいたが、そもそもほとんどコミュニケーションのない医療連携も数多く存在していた。例えば、一方的にFAXを送付するだけであったり、それぞれの医療機関で専門(担当)の事務職員が窓口となっているケースも多くみられた。 こうした結果から、医療連携は政府主導で行われているのであって、医療機関の趣旨とは異なっているとも言うことができる。その1つの理由は、医師の多忙さにあり、医師は連携先医療機関に送った患者のことをフォローする時間的余裕がない状況にある。 さらに、医療連携を機能させるには、医療機関間に課題があるだけでなく、医療機関内にも多くの課題が存在していることが分かった。上記の例でいえば、医師の多忙さによる、医師の職務満足の低下である。そのため、医療機関は職務満足を高めるための組織改革を行っていかなければならない。その具体策について、経営学における理論をもとに、議論を展開した。
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