本研究課題は、社会的現象としてのベンチャービジネスを捉えるために、欧米における先端的研究事例の理論的・方法論的検討に加え、その検討に基づいた経験的検討を行うことで、我が国における企業家研究の研究水準を押し上げることを目的としている。本研究課題から得られた研究課題は、(1)欧米における企業家研究の理論的・方法論的転回のレビュー、および(2)我が国における事例にもとづいた経験的検討に分かれる。本研究課題の主たる研究成果は、以下の通りである。 まず、(1)理論的・方法論的検討については、近年の企業家研究における理論的新潮流である実践的転回については、『経営と制度』に査読付き論文(「秩序構築の主体としての社会企業家:倫理・社会資本・正統性概年の再検討を通じて」)が掲載された。加えて方法論的検討として、企業家研究における言説分析の適用に関する研究報告を、日本情報経営学会で実施し、報告に基づく論文(「言説への(再)接続と解除としての制度化:フリーランス言説における騎士/従僕・英雄」)を『首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻リサーチペーパーシリーズ』として公刊した。 更に本研究課題では、これらの理論的・方法論的転回の検討に基づき、(2)我が国の事例に基づく経験的検討が行われた。具体的には、社会運動論に基づく産学連携ベンチャー企業の理論的・経験的検討(「イノベーションの闘争モデル:大学発ベンチャーの生き残りをかけた闘争過程」)が日本経営学会学会誌に、環境系ベンチャー企業の制度派組織論に基づく理論的検討(「環境経営の制度派アプローチに関する理論的考察」)が『経営と制度』に、それぞれ査読付き論文として掲載され、老舗企業における企業家精神と北海道におけるエコツーリズム推進事例に関する経験的検討が、『首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻リサーチペーパーシリーズ』として公刊された。
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