国立大学法人化に伴い、大学から生み出される知的財産に着目されると同時に、大学研究における他者の知的財産の利用についても議論がされ、我が国においても「ライフサイエンス分野におけるリサーチツール特許の使用の円滑化に関する指針」が策定されている。しかしライフサイエンス分野においては、特許権よりも研究マテリアルの利用の方が研究遂行に影響を与えているという複数の報告がある。本研究では大学の研究を促進するために速やかに研究マテリアルを入手しつつ、同時に大学研究から生じる知的財産の活用も促進する知的財産マネジメントのあり方を探ることを研究目的とする。 平成20年度は研究マテリアルの移転の実態を把握するため、京都大学「医学領域」産学連携推進機構より契約当事者の匿名化をしたMTA関連資料を入手し、(1)契約形態、(2)提供元、供給先、(3)研究マテリアルの内容(種類、特許権、開発段階等)、(4)子孫・修飾体・改変体に関する条項、(5)知的財産の取り扱いに関する条件、(6)研究成果の公表に関する条件を分析した。マテリアルの入手においては、提供元により交渉期間や契約条件が影響を受けていることが示唆され、特に公表に関する条項は民間企業が提供元となっている場合には事前の承認を求めているのに対し、公的研究機関等の場合には事前通知、謝辞、コピーの送付が条件となっていた。しかしこれらの契約条件の違いは、提供元の性質(営利・非営利)のみならず、提供するマテリアルの種類、特にライフサイエンス分野では医薬品候補となりうるか否かを含めて詳細な検討する必要がある。
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