大学の研究成果(知的財産)を活用し、社会還元することが重要視されると同時に、大学における他者の知的財産の利用の在り方についての議論がされている。中でもライフサイエンス分野では、特許権よりも研究マテリアルの利用の方が研究遂行に影響を与えていると報告がある。そこで本研究では、大学の研究を促進するために速やかに研究マテリアルを入手しつつ、同時に大学研究から生じる知的財産の活用も促進する知的財産マネジメントの在り方を考察することを研究目的とする。 平成22年度は、京都大学「医学領域」産学連携推進機構より契約当事者の匿名化をした入手MTAのデータベースを解析し、提供者により提供マテリアルの種類が異なる傾向があり、非営利機関(大学/公的研究機関)からは動物、遺伝子が提供され、営利機関からは主に医薬品等の化合物が提供され、バンクからは主に細胞が提供さていることを明らかにした。研究マテリアルの派生物に関する条件は、海外非営利機関のMTAにおいて規定されていることが多いことや、国内営利機関のMTAには、マテリアルを使用して生まれた発明の取扱いの条件が付されていることが多かった。また契約状況については営利機関が提供者となっているMTAにおいて「契約未締結」となっている割合が高かった。 更に、企業から入手する際の問題点について実態を把握するため、医学系大学産学連携ネットワーク協議会MTA-WGグループにおいて、約20名のアカデミアMTA担当者から意見収集を行い、海外企業(特にバイオベンチャー)からの、知的財産に関する条件が厳しい傾向があることがわかった。
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