研究概要 |
本研究においては、日本人移住者が定住する南米諸国において一般的に抱かれている「日本人は組織力が高い」であるとか、「日本人は組織運営に長けている」という通念を足掛かりに、ボリヴィア、ペルー及びブラジルにおける日本人移住者の組織的営みに関する事例を取り上げ、それらの事例の比較・追試分析を通じた探索的かつ理論的な考察を行う。 本年度は、ペルー共和国において目覚ましい成長を遂げている日系の信用組合3機関(ABACO, AELUCOOP, PACIFICO)に関する資料の収集を行うとともに、それぞれの機関の専務にインタビューを実施し、内部者の視点から組織の形成及びその後の運営について語っていただいた。さらに、ブラジル連邦共和国において「コチア産業組合」に関する資料の収集を行うとともに、コチア産業組合の創始者である下元健吉氏のご子息で、自らもコチア産業組合の任意解散をとりまとめ、その後の清算業務に尽力されている下元慶郎氏にインタビューを実施し、コチア産業組合の解散の経緯等について補足情報を入手した。 これらの資料・データを基に事例を記述し、これまでにボリヴィアにおいて実施した調査を基に記述した事例との比較・追試分析を通じて、日本人移住者は、移住初期の諸困難を自らの営為によって克服していること、組織の運営に携わる役員の献身とそれに応える組合員の奉仕によって協同を促進していること、が明らかになった。このことを本研究の理論枠組みに照らし合わせ、運動論の視覚からは「自責」を核にした運動が展開され、協同組合論の視覚からは「相互扶助」に基づいた組織運営がなされていることを、仮説的な結論として導出した。この仮説については、次頁の研究活動に示す学会等での発表を通じて有識者から助言を得るなどし、最終成果物として、論文1編、ディスカッションペーパー2編を取りまとめ、公表した。
|