本研究は、日本のモノづくりの競争力について、合繊長繊維織物の産地である福井県を対象に、繊維産業における企業間分業を通じた生産技術(製品技術・製造技術)の蓄積・発展との関連から、織布企業を中心に聞き取り及びアンケート調査を行った。絹、人造絹糸から合成繊維へと移行するなかで、織布企業は原糸メーカー、織機メーカーなどと共同で製織技術を確立してきたが、設備の自動化・電子化に伴い、これらの技術が設備に取り込まれていき、設備の販売とともに技術が流出することとなった。その後、原糸メーカーの多くは有機化学の技術を活かし「脱・繊維」の方向に進む一方で、技術・ノウハウを蓄積・発展させてきた福井産地に、製品開発の主体が移ることになり、スポーツ衣料や産業用資材など、機能性や品質を活かした製品への進出が見られている。また、規模が小さい企業においても、特長ある技術を持ち、産業用資材へと展開しているが、熟練技能に依存しがちであり、経営者や従業員も高齢化が進み、後継者不足や技能伝承が出来ないという問題を抱えている。また、繊維機械メーカーが生産を止め、設備更新や部品供給で問題を抱えていることも明らかになった。
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