本研究では再生対策の前段階である再生認識の相違を踏まえて、そこから導かれた定義に基づき、日米の再生認識基準の相違、その相違が生じる制度的環境やそれぞれの再生マネジメントの違いについて明らかにすることが調査目的である。 公刊資料から企業の売上高経常利益率を参考に、業績不振に陥った経験のある企業を選出し、衰退と回復を基準に分類した結果、各分類の典型ケースと判断される数社が明らかになった。各ケースの聞き取り調査を実施し、業績低下の原因(景気変動、多角化、海外新興勢力の脅威、戦略不適応等)、業績不振認知時期(早期、末期多様)について企業側の認識軸が明らかになった。またこれまでの調査経過からは米国企業の再生状況と再生対策について、日本企業の事例と比較すると、財政的に困難な経営状況が予測される場合における意思決定から対処行動までの過程に相違がみられた。 国内企業を対象としたインタヴュー調査からは、比較的早期に施策を実施していた企業と実施できなかった企業、または早期に危機意識できた企業とそうではない企業、早期に危機を意識しているにも関わらず対策が打てない企業が存在するのは、環境的な変化が契機となり従来からの組織内部の問題が顕在化するケースが多いことから、内部の問題発見が危機の後に省みられる事例が多いことによる。日本企業の赤字慢性的な経営状態の原因の一つは、戦略なき事業継続や意思決定の遅さ、組織内部の正しい情報伝達の困難性などが指摘できる。
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