一般に企業再生といわれる現象は、企業の悪化した業績を回復する行為を示していると考えられる。しかし、これらの企業再生という経営組織の業績回復行為にも多様な形態が存在し、それに付随して再生が必要となる状況や再生成功といった再生の定義そのものもまた多様に存在する。 このような企業再生時の再生状況の認識とそれに続く再生行動を対象とし、本調査では再生行動の前段階である再生認識の相違を事例比較することから、その相違が生じる組織内部環境および再生行動の違いについて整理し考察を行った。 その結果、業績が低迷し回復した経験のある企業を操作化、選出し、再生パターンを分類した結果、5分類のケースが明らかになった。また各分類の聞き取り調査から、業績低下の原因は主に経済環境変化、無理な事業拡大、意思決定における戦略性の欠如が挙げられた。同時に業績不振認識時期について、早期認識企業では業績安定時期の常時から危機意識を喚起する施策が取られていることが明らかになった。さらにこれら業績低下の認識が組織内部でなされることと、実際に組織で再生行動が実施されることとは連鎖的に行われるのではなく、早期の再生対応を組織内部の問題や従来からの継続課題が阻害していることが明らかになった。 企業再生における認識相違および認識と行動の非連続性の問題は、既存研究ではほとんど扱われていない。認識と行動の相違は組織の常時の課題と関連することから、環境的な変化が契機となり従来からの組織内部の問題が顕在化するケースが多いという結果が指摘できた。これらの常時の危機意識および組織課題と、再生認識の関係について米国事例との比較までは明らかにすることはできなかったが、今回の調査から日本企業の事例分析に基づき、再生における認識と行動という視点から企業再生における問題点について整理を行った。
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