本年度は、これまで作成してきた自動車部品の設計構造行列(Design Structure Matrix、以下DMS)の解析作業に取り組んだ。DSMは、開発製品をシステムの観点から捉え、システムを構成する要素(部品やサブシステム)間の依存関係を表形式で網羅的に示すものである。DSM分析としては、クラスタリングやパーティショニングが知られているが、今回はクラスタリング分析を行った。クラスタリング分析とは、DSMの行および列を一定のルールで並び変えることで、相互依存性の高い部品やサブシステムをいくつかの塊(クラスター)に整理する手法である。 分析の結果、分析対象となった自動車モジュール部品の内部をさらにいくつかのサブモジュールにクラスタリングできる可能性を示せた。しかし、課題として残ったのは、新たにクラスタリングして得られた設計構造が元々の設計構造よりも優れているのか、どの程度優れているのかを検証する方法論と手法の研究である。これには、当該製品の開発プロセスに関する基礎データ(部品別や工程別の開発工数やリードタイム、性能データなど)が必要になるとともに、生産段階における製造性や使用段階における補修容易性といったより川下のプロセスとの一体的な分析が必要である。さらに、作成したDSMのサンプル数もまだ限られており、今後も継続的な研究が必要である。
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