本研究では、コーポレート・ベンチャー(以下CV、本研究では社内ベンチャー、スピンオフ型ベンチャー、コーポレート・ベンチャー・キャピタルをその対象と捉える)による事業創造、CVによる事業創造が有効に機能するうえでの母体企業の役割、および母体企業内でCVをハード面・ソフト面から支援する専門組織(本研究では「社内インキュベータ」と呼ぶ)の役割に注目し、特にCVの包括的・体系的な導入による新規事業創造の必要性、および既存企業におけるCVの支援機能・インキュベーション機能としての社内インキュベータの役割を明らかにすることをその研究目的としている。 本研究課題の初年度にあたる平成20年度は、まず事業創造に関する組織構造や手法について理論面を中心に検討し、事業創造との関連でCVに関する考察を進めるとともに、当該企業内で事業創造を支援する専門組織の役割を理解するために、独立系ベンチャーを支援するインキュベータおよびインキュベーション機能に関する先行研究を検討した。また、文献研究と平行して、ベンチャー企業をハード面・ソフト面から支援する専門組織であるインキュベータの実態や現状を把握するために、米国シリコンバレー(サンノゼ地域)におけるインキュベータであるJETRO BICを訪問した。BICのベンチャー企業に対する支援や役割などに関するインタビュー調査を行い、サンノゼ地域のインキュベータの現状や公的な産業支援機関に関する情報・資料を収集することができた。CVに支援を提供する母体企業の役割およびベンチャー企業に支援を提供するインキュベータの役割についての考察は次年度以降も引き続き研究課題とする。なお、本年度に得られた知見は、学術雑誌への投稿や学会・研究会での報告を通じて可能な限り公表したいと考えている。
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