本研究における関心は、コーポレート・ベンチャー(以下CV)による事業創造と社内インキュベータの役割にある。本研究では、社内インキュベータを当該企業内における事業創造を支援する専門組織と捉えているが、その役割を検討するうえで、独立系ベンチャーを支援する機関・組織としてのインキュベータの機能や役割を参考にしている。本研究課題の第2年度目にあたる平成21年度は、前年度に引き続き独立系ベンチャーを支援するインキュベータおよびインキュベーション機能に関する調査研究を進めた。その過程で、インキュベータが機能するためには、インキュベータを運営するトップ・マネジメント、さらにはインキュベータの運営の中心となるインキュベーション・マネジャーの役割が重要であると考えるに至った。特にインキュベーション・マネジャーの役割として、インキュベータの管理・運営、外部機関および外部専門家との関係構築・維持、入居企業のサポートなどがあげられるが、中でも外部機関や専門家とのネットワークを構築しそれらの資源を活用することによって、入居企業へのサポート体制およびインキュベータの機能を充実させることが、インキュベーション・マネジャーの重要な役割であることがわかった。そこで、インキュベータの機能やインキュベーション・マネジャーの役割を参考にしたうえで、既存企業内で事業創造を支援する社内インキュベータの機能やインキュベーション・マネジャーと同様な役割を担う人物についての調査研究を進め、わが国におけるCVを活用した事業創造の意義、CVを支援する専門組織である社内インキュベータの在り方について明らかにしたい。
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