本研究課題の最終年度にあたる平成22年度は、独立系ベンチャーを支援するインキュベータの役割およびインキュベーション機能に関する調査研究を進め、ベンチャー企業を支援する機関・組織としてのインキュベータの機能や実態を把握することを試みた。その研究成果として、インキュベータが、1.新興企業や創業間もない企業や起業家を対象として支援・育成する、2.入居企業の求めるさまざまな経営資源やサービスを提供する、3.インキュベーション・マネジャーによる支援と関係機関のネットワークを通じた支援を行う、4.入居企業を自立・卒業させることで地域における産業振興、雇用創出および地域経済の活性化を図る、といった特徴を有することを提示した。また、昨年度から引き続いて、インキュベータの運営の中心となるインキュベーション・マネジャーが果たす役割に関する研究調査を進め、インキュベーション・マネジャーの豊富な経験や情報、入居企業・卒業企業の成功要因や失敗要因の把握、さまざまな専門家や関係機関とのネットワークの構築、そしてインキュベータ内外のコミュニティを通じた入居企業のサポートなど、インキュベーション・マネジャーの役割を再認識することができた。 本年度の研究成果として「ベンチャー企業支援におけるビジネス・インキュベータの意義に関する一考察-米国のビジネス・インキュベータによる起業家支援を中心に-」(白鴎大学ビジネス開発研究所『白鴎ビジネスレビュー第20巻第1号』2010年、65-77頁)があるが、本年度までの研究により、ベンチャー企業に対するインキュベータの役割や支援内容を明確にすることができた。なお本研究課題を通じて得られた知見は、学術雑誌への投稿や学会・研究会での報告を通じて可能な限り公表したいと考えている。
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