本研究課題では、コーポレート・ベンチャー(以下CV、本研究では社内ベンチャー、スピンオフ型ベンチャー、コーポレート・ベンチャー・キャピタルをその対象と捉える)による事業創造、CVによる事業創造が有効に機能するうえでの母体企業の役割、および母体企業内でCVをハード面・ソフト面から支援する専門組織(本研究では「社内インキュベータ」と呼ぶ)の役割に焦点を当てている。 本研究では、ベンチャー企業をハード面・ソフト面から支援する専門組織であるインキュベータの実態や現状に関する調査研究を進めた。インキュベータが機能するためには、インキュベータを運営するトップ・マネジメント、さらにはインキュベータの運営の中心となるインキュベーション・マネジャーの役割が重要である。インキュベーション・マネジャーの役割として、インキュベータの管理・運営、外部機関および外部専門家との関係構築・維持、入居企業のサポートなどがあげられる。なかでも外部機関や専門家とのネットワークを構築しそれらの資源を活用することによって、入居企業へのサポート体制およびインキュベータの機能を充実させることが、インキュベーション・マネジャーの重要な役割であることがわかった。 本研究課題による成果として、インキュベータが、1.新興企業や創業間もない企業や起業家を対象として支援・育成する、2.入居企業の求めるさまざまな経営資源やサービスを提供する、3.インキュベーション・マネジャーによる支援と関係機関のネットワークを通じた支援を行う、4.入居企業を自立・卒業させることで地域における産業振興、雇用創出および地域経済の活性化を図る、といった特徴を有することを明らかにした。
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