研究課題
2008年度においては、2つの方面の調査をほぼ同時並行する形で研究が進められた。ひとつは従来のリサーチサイトである映画産業(コンテンツ制作の現場)に対するもので、これはさらに定性的調査と定量的調査の2つのタイプの調査が行われた。近年、優れた興行成績を計上する映画コンテンツの制作においては、製作委員会と呼ばれる企業間の提携がよく見られている。製作委員会の形成やその運営と継続は、プロデューサーシップのアウトプットの一形態であると考えられた。そこで製作委員会の状況を知るために、それらを作り上げたプロデューサー数名に対する定性的調査と、過去8年間の興行上位作品における製作委員会の定量的調査(ネットワーク分析)を試みた。前者では、大手マスメディア企業の代表として組織人的に振る舞う一方で、個人的な嗜好による企画開発や私的な人脈を通じた企業間提携の構築といったプロデューサーたちの二面性がうかがい知れた。後者については、製作委員会の典型的な構成パターンを抽出することができた。もうひとつの調査はOAメーカー企業における若手従業員の就業観に関するものである。これは早期離職という昨今の課題に関連するものであるが、本研究関心からすれば、私的ネットワークの構築と発展というプロデューサーシップの形が一般的な企業内においてどのように見られたかという問題であり、またそれが従業員の就業観にどのような影響を与えているかという点で相互に関連するものである。この調査についてはまだ分析の途中ではあるが、希薄なタテの繋がりと同期従業員間の連帯が多く見られており、それがネガティブな状況を生み出しているということがわかりつつある。2009年度は双方の調査について、分析を深めると同時に研究成果の報告を行っていく年度としたい。
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Working Paper, Institute of Economic Research, Kagawa University 135
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