看護師としての充実した人生を過ごすには、仕事と個人生活双方の充実が不可欠である。しかし、現状では職場のストレス、家庭のストレス、そしてそれらの間での葛藤により適切なキャリア開発が阻害されることも少なくない。 看護組織の活性化のためには、各看護師が適切なキャリアを創造し、職業人生を充実させることが不可欠であろう。 そのための介入は、職場領域だけでなく、家庭領域に対しても行なわれる必要があるといえる。よって本研究では、看護師のキャリア開発を阻害する要因を検討し、職場環境・労働環境の構築に資することを大命題とした。 そこで本研究では、看護師を対象としたキャリア・ストレス・モデルを提示し、キャリア・ストレスとしてのワーク・ファミリー・コンフリクトの発生までの実証的研究を展開した。そして、職場と家庭の2つの領域への積極的な関与が重要であるという理論仮説を設定して、最適なワーク・ファミリー・バランスの構築に向けた、病院組織に対する組織的介入のガイドラインを開発するための基礎資料を得ることを目的とした。家庭及び職場環境ないしは労働条件といった状況要因から、キャリア・ストレスの発生までのプロセスを明確化し、看護師チームの活性化のために実施する組織開発のための有益な羅針盤を獲得することを試みた。 研究方法としては、質問紙調査法を用いて、実証的に看護師のキャリア・ストレスのメカニズムを解明した。主な尺度は、多次元的ワーク・ファミリー・コンフリクト尺度(仕事と家庭のバランスについての評価)、成人キャリア成熟度尺度(自分の人生や生き方、職業生活についての考えを評価)、職務ストレッサー尺度(看護職におけるストレッサーを評価)を用いた。その結果、ストレス反応は、勤務年数が短い看護師に高く見られる。さらに、一方で、ストレッサーおよびワーク・ファミリー・コンフリクトは勤務年数の長い看護師の方が高く認知している傾向にあるということなどが明らかとなった。
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