1年目である平成20年度は、主として組織学習論に関して、文献・資料研究および事例についての知識を深めるための事例研究会を開催した。 具体的には、まず、毎年続々と発表されている組織学習研究の組織観を改めて整理し、今後の展望を探るため、主に2003年から2008年までの論文を対象に、文献レビューをおこなった。その結果、研究対象と定める組織の境界が従来に比べ拡大し、かつ、学習主体としての組織メンバーの存在感がわずかながら高まっている傾向が見出せた。なお、この結果は、2009年度(5月)の経営学史学会で報告予定である。 次に、2回(12月と2月)実施した事例研究会では、正規従業員と非正規従業員が混在して働くケースを2つ取り上げ、組織学習プロセスの知識獲得フェーズや解釈フェーズにおいて、学習サイクルが途中で断絶せず、有効に働くときには、どのような組織状況や条件が見出せるかについて検討した。その際には、組織学習の視点だけでなく、他の経営学の視点からの知見も得るために、研究テーマの異なる研究者を研究会に招き、専門的な知識のご提供をいただいた。その結果、さらに掘り下げて検討すべき点が明らかになったり、ある程度リサーチ・クエスションやリサーチ・デザインの見直しが必要になりそうであることが確認された。また、こうした過程で、正規従業員のみの事例ではあるが、非常に興味深い事例に遭遇することができ、その事例分析も行った。それは、2009年6月の『一橋ビジネスレビュー』に掲載予定である。
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