研究概要 |
本研究では「科学的知見がイノベーションに発展する際に, どのように産と学が連携を成熟させていくのかという過程を, 新しい分析手法である多重ネットワーク分析により解明すること」を目的とする. 平成20年度は, 論文および特許のデータからネットワークを構築し, それらネットワークの間の関係性と成長モデルについて分析を行う. 平成21年度は, 発展的な分析として, 論文および特許のネットワークからコミュニティを数理的に求め, その分析を行う. また, ネットワーク上をイノベーションがいかに伝播するかの分析, 特に科学的知見とイノベーションが相互を刺激しつつ, ネットワークを伝わる過程の分析を行う. 上記を受け本年度は, ネットワーク構築のためのデータベース構築を行った. 当初の予定では, 論文データとしてThomson ISI社のWeb of Scienceを使用する予定であったが, 論文が国際雑誌に限られているため, これを変更し独自に入手した. その後, 2つの多重ネットワークを採取し, その分析を行った. 1つは半導体産業における73名の発明者/論文執筆者ネットワークであり, もう1つはバイオ製薬産業における127名のネットワークである. これらにおいて, 多重ネットワーク依存モデルを用いた分析を行った. 上記の研究結果として次を得た. 1)論文と特許をともに行う2者の関係はバイオ製薬においては強く, 半導体産業において弱かったことから, 分野によつて協業のスタイルが異なることが示された. 2)従来の分析ではわからなかった, 3者の関係性(たとえば, AとBは論文共著, AとCは特許共願の, Aを中心とした協業関係)が強く現れることが示唆された
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