研究概要 |
本研究は「科学的知見がイノベーションに発展する際に,どのように産と学が連携を成熟させていくのかという過程を,新しい分析手法である多重ネットワーク分析により解明すること」を目的とした,本研究では組織ではなく,産あるいは学の組織に属する個人を取り扱う.この理由は,同じ組織に属する個人をまとめて組織間のネットワークを形成すると,その組織がそれらすべてのリンクに裏づけされた連携能力があるかのように過大に評価されてしまうためである. 大きなイノベーションが起きると大量の特許が生まれることが指摘されているが,研究開発者の空間をそれがどのように広がっていくかについて,ネットワーク上現れやすい構造を手がかりとして,本年度は分析を行った.研究遂行上難しいポイントは,研究開発者をどのように区切るかということである.区別しない全体の傾向を知ることはもちろん可能であるが,そのような一般的な話から得られることは少なく,分野によって区切る必要がある.ところが,1人の研究開発者がどの分野に属するかということは,どのような分野の区切りにするかというだけでなく,その研究開発者が複数の分野に属しうることから困難である.本研究では,特許の技術分野を中心として切り分けた.当初はバイオと半導体産業だけであったが,広範な分野,広範な人数の分析を行った.予想通り分野によって異なる傾向にあった.これがどのような成長過程の違いによるかについて調べるため,モデルの構築を行っているが本年度で完結しなかったため引き続き研究を行っている.
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