私は平成20年度の科学研究費補助金の成果として、1件の図書(分担執筆)と1件の学会発表を行った。それらは、基盤産業における競争条件と既存の中小企業の情報化を論じた先行研究の限界を提示し、研究課題の理論的背景を強化したと考えている。詳細は以下の通りである。 2008年12月に実教出版から出版された『現代企業論』所収「企業の成長とイノベーション」では、量産品製造企業が製品開発の成果として、開発期間の短縮、開発生産性の向上、総合商品力の向上の3つを志向していることを示した。換言すれば、このことは量産品製造企業の製品開発過程と密接に関わる基盤産業が上記3つの条件を満たすことにより、競争優位を獲得できることを明らかにした。 また、2009年1月に日本中小企業学会西部部会で報告した「中小企業における情報化の意義」では、既存研究において3次元CADを含めた情報技術が基盤産業の大半を占める中小企業の企業内部と企業間関係に如何なる影響を及ぼしたのかを整理した。このことから、先行研究では、対象となった産業、情報機器、企業規模の差異が厳密に精査されることなく論じられてきたことを明らかにした。以上を踏まえ、今後は企業訪問を中心に、具体的な基盤産業における情報技術の利用方法を分析していく予定である。
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