研究概要 |
本研究の目的は, 日本企業の新卒採用行動に影響を与えている要因と新卒採用行動か, いかに組織の業績に影響を与えているのかを明らかにすることである。近年、団塊世代の一斉退職と少子化問題の影響で, 多くの熟練者の技能や知識を引き継ぐ若年就業者の数が減り続けており、日本企業の製造現場における技能伝承が円滑さを失いつつある。日本企業の競争力の源泉は、「ものつくり」にあると言っても過言ではない。それゆえ、ものつくりの現場における技能伝承の断絶は、今まで日本企業が蓄積してきた競争力の根幹を揺るがす事熊であると言えよう。このような状況に立たされている日本企業は、人材の確保、とりわけ、新卒採用行動に重点を置き始めている。しかしながら、闇雲に新卒採用を増加させることは危険である。バブル期における新卒者の大量採用とバブル崩壊後の新卒採用の凍結は、日本企業の組織構造を大いに歪ませると同時に、ニートやフリーターの増加という社会問題も引き起こした。これらは, 日本企業の向こう見ずな採用行動の結果と捉えることが可能である。それゆえ、日本企業は、新卒採用行動がどのような環境要因から影響を受けるのか、さらに、新卒採用行動が組織成果にどのような影響を与えているのかを理解することで企業はもちろん, 日本社会全体にとって有意義なものであると言える。 今年度は、その調査の第一ステップとして、4社の日本企業で新卒採用に携わる人事部採用担当者5各にインタビュー調査を実施した。この調査によって、日本企業の新卒採用行動の論理や新卒採用行動に影響を与えている環境要因と組織的要因について理解することができ、今後の調査の礎となると言える。
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