研究概要 |
本研究の目的は、日本企業め新卒採用行動に影響を与えている要因と新卒採用行動が組織業績に与える影響を理解することにあった。そこで、昨年度は、その調査の第一ステップとして、関東・関西含む4社の日本企業で新卒採用に携わる人事部採用担当者5名にインタビュー調査を実施した。この調査によって、日本企業の新卒採用行動の論理や新卒採用行動に影響を与えている環境要因と組織的要因について理解することができ、今後の調査の礎となった。今年度は、それらのデータなどを考察し、文献研究を重ね、来年度実施する大規模な質問票調査の下地を作った。来年度実施予定の質問票調査の対象企業は日本の一部上場企業3684社を予定している。そこでは、日本企業の新卒採用行動傾向や新卒採用行動に影響を与えている組織的要因、外的要因、制度的要因などについての質問を予定している。 本研究の意義は,新卒採用行動の戦略的指針の提供にあると考えられる。優良企業のほとんどが採用に力を注いでいること、新人参入が職場を活性化させる側面や既存成員にポジティブな影響を与える効果があること、さらに、技能継承の効率化と若年採用がプラスの関連にあることなどから示されているように、新卒採用は組織を活性化させ、長期的な競争優位を生み出すことにつながる。そのような成果を生み出すためには、長期的なビジョンや戦略を持ちながら、自社に適した新卒採用戦略を策定することが重要になる。本研究では、日本企業の新卒採用行動に影響を与えている要因を体系的に捉えることで、何を意識しながら新卒採用行動をとるべきかといった戦略的指針となり、それが組織の成果にどのような影響を与えるのかに関する理解を促進させることが可能になる。また、経営学の領域において、企業の採用行動に焦点を当てている研究はほとんど目にすることができないという点において、日本企業の新卒採用行動本格的に焦点を当てた、日本初の試みと言っても過言ではない。
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