本研究の目的は、不正の通報という現象において、内部通報行動の促進要因を明らかにすることにある。その際に、不正の種類が持つ影響と通報者の属性が持つ影響を定量的に区別し、組織行動による視点を取り込むことでその関係を明らかにする。組織と個人との関係を記述するために、組織コミットメントの概念を取り入れることを意図している。組織コミットメントの概念を用いることで、ホイッスル・ブローイングの行動特性が明確になると考える。さらに、先行研究を整理して、行動プロセスのモデル化を行うことも目的としている。 本年度は、今後の調査で必要となる質問紙の設計と精緻化を行った。質問紙の設計は、Miceh and Near(1992)によるホイッスル・ブローイングに関する項目に加えて、Meyer and Allen(1997)によって作成された組織コミットメントの項目を加えた。これにより、情緒的コミットメント・存続的コミットメントの測定を行った。ここで作られた質問紙は、本年度に行った予備調査によって不要な項目を特定しており、成果を反映して次年度で用いる。インタビュー調査では、コンプライアンスのツールとして用いられることも多くなっている内部通報制度の設計・運用に関する現状の把握を試みた。この作業はアンケート調査と併せて、制度設計・政策設計のための理論的な基礎の作成につなげることができる。現在は、初年度の文献調査によって明らかになった知見をまとめたワーキング・ペーパーの作成を行っている。
|