本研究の目的「タイ東北部における小売国際化とその地域経済への影響関するフィールド調査」を遂行するため、本年度は以下のような調査を実施した。 まず、タイ全体及びウボン・ラーチャターニー県における小売・卸売業者数、売上高、規模別内訳、形態別内訳(支店、個人事業主の別)、小売種類別の時系列データを収集し、外資参入の前後、地域の流通業者にどのような変化が起ぎたのかを定量的に検討した。 次に、JBIC委託調査で実施したアンケート調査、特にウボンにおける家計の消費行動、ウボンにおける農民の流通組織に関するアンケート結果を本研究の目的に照らして分析しなおし、興味深い結果を得た。 主な結果は次のようなものである。(1)ウボンという地方都市の平均的な所得水準の人々が日常的にハイパーマーケットを利用し、他の小売業態(市場、個人商店、百貨店)と使途を分けていること、(2)ハイパーマーケットの購買層は自家用車で買い物に行くケースが多く、地方都市における自動車普及率は予想以上に高いこと、(3)ハイパーマーケットが自社大規模配送センターを利用した物流網を構築しているにも関わらず、ウボンの仲買人を通じた農産物流通の基本的な構造には変化が見られないこと。 第三に、8月に現地調査を実施し、ハイパーマーケット(テスコニロータス社)側からみたタイの消費者像や、ハイパーマーケットの大規模配送センターの実態に関する情報を入手した。 これまでの中間経過を取りまとめて、11月末に行われた国際ワークショップ「Joint Workshop Saitama 2008」の流通国際化に関するセッションで発表を行い、日本・イギリス・台湾から参加した専門家と議論した。さらにワークショップでの議論を踏まえ、研究内容を英文論文にまとめる準備に着手した。単著『日本合成洗剤工業のアジア進出』は、元々本プロジェクトとは別個に進めていた研究の成果であるが、本プロジェクトの成果の一部も盛り込まれている。
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