本研究の目的は、「多国籍企業」と呼ばれる巨大製造企業の中でも日本多国籍企業(とくに輸送機械と電気機械)におけるグローバル・ブランドの管理(以下ではGBMと略記)について、親会社のブランド管理組織による地域統括本社への意思決定実態を明らかにすることである。ブランド管理組織の研究自体が世界的にみて稀であり、さらに当該組織の管理内容・管理プロセスに注目した研究は皆無といってもよい。また、GBM研究についても研究蓄積に乏しい状態である。これらを考慮すると、本研究の意図する成果はGBMの発展のみならずグローバル・マーケティングの発展においても有益であると考えられる。 これまでの研究では、分析枠組みの側面をブラッシュアップするとともに、インタビュー調査によってこれまでよりもさらに多くのブランド管理担当者とコミュニケーションを醸成した。前者では、学会報告においてしばしば指摘された「ローカル/リージョナル・ブランドに対するグローバル・ブランドの相対的重要性」や「従来のマーケティング概念あるいはブランド管理概念との相違」について、それらを詳述することに重きを置いた。また後者では、電気機械企業2社におけるブランド管理組織のマネジャーや担当役員から現状と課題について聞き取りを行い、今後に向けた示唆と協力を得た。 平成23年度の目標は、前年度末に起こった東日本大震災で中断したアンケート調査を再開させることと、その結果に基づき当該企業の欧州地域統括本社に対してインタビュー調査を実施することであった。アンケート調査は年度をまたいで実施することができたものの、中断したことによって当初は協力的だった企業も方針が変わり、有効回答数を大幅に減らす結果となった。また、インタビュー調査も震災後の影響を大きく受け、当初の予定どおり実施することが叶わなかった。
|