本研究の目的は、わが国の地方空港における効率的運営を考察することである。近年の研究では、わが国の地方空港の多くが赤字運営とされており、こうした状況を改善することが求められている。 イギリスでは、地方空港においても民営化が進んでおり、イギリスの地方空港の効率性に影響を及ぼす要因について定量分析を通じて導出することにより、これをわが国に対する示唆とする。 はじめに、昨年度(平成20年度)の研究において、日本とイギリスの地方空港の経営効率性をDEA(包絡分析法)により計測して比較したところ、イギリスの民間所有空港が効率性に優れていることが明らかとなった。さらに、空港機能とターミナル機能を一体的に経営しているイギリスの空港では、一体的経営により非航空系部門(ターミナルの商業施設など)における効率性の相対的優位が確認された。 そこで、今年度(平成21年度)の研究において、わが国と比較して高い効率性を達成しているイギリスの地方空港に関して、どのような要因が効率値に影響を与えるか分析した。DEAにより得られた効率値を被説明変数として回帰分析を実施した結果、1.LCC(低費用航空会社)やチャーター便が地方空港の航空系活動の効率性に最も重要な影響を与えること、2.ヒースローとの定期路線の有無が地方空港の航空系活動の効率性の上昇要因となること、3.空港の所有権構造は地方空港の効率性に有意な影響を与えるものの、その程度はLCCやチャーター便が与える影響に比べれば小さいこと、などの帰結が導出された。 わが国では、イギリスのようなLCC市場は未成熟であり、したがって地方空港の効率的運営に対するLCCの活用は一朝一夕になしうる課題でないものと考えられる。しかしながら、チャーター便に関しては、一部の地方空港で既に活用されている事例もあり、空港の効率的運営に対して有効であることが示唆される。
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