本研究は、企業のマーケティングによる環境問題の対応に関する理解(以下、エコ・マーケティング理解)に焦点を当て、エコ・マーケティング理解におけるエコ理解の前提に迫る歴史的研究を通して、エコ理解の生成・変容メカニズムを明らかにすることが目的である。本年度は、前年より継続している事例分析を完成させ、エコ・マーケティング理解の理論的再検討の手がかりを得た。 事例分析では、ドイツの洗剤市場におけるエコ理解の歴史的生成に焦点を当てた。企業のマーケティングが環境問題に積極的に取り組むべきであるという議論は、特に1990年代以降のドイツで多く見られる。どのような経緯でそうした議論がなされ得たのか、またエコ理解の生成過程はどのようなものかを理解するために、エコ洗剤の生成過程を歴史的に分析した。この分析において、エコ洗剤の生成過程は、一つのエコという価値基準が誕生したプロセスではなく、歴史的社会的背景に依存して生成され、多様な価値基準が並存する過程である側面が浮き彫りにした。 理論的再検討では、エコ理解を、事例分析で見られたような定まらないダイナミックな生成過程として射程に入れることが課題として示唆され得た。つまり、エコ・マーケティング理解とは、特定のエコ理解を想定して誕生したが、同時にその想定にエコ・マーケティング理解の限界があると指摘され得た。そして、こうした課題はマーケティング理論でも議論されており、共通の課題を抱えるということも示唆され得ると考えられた。
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