平成22年度は最終年度(3年目)であり、文献調査および海外調査を集中的にすすめるとともに、研究成果の一部を論文にまとめ3本発表した。1)海外調査:タイ・シンガポール・ベトナムの3カ国にて調査活動を実施した。昨年度に続く継続調査である「日本文化コンテンツの利用行動に関する調査」をタイとシンガポールで実施した。ベトナム(ホーチミン)では、インターネット・カフェの利用はまだ一般的ではなくCD・DVDを店頭で購入する利用スタイルが主流である。日本製文化コンテンツが中小規模のショッピングセンター内で販売されていることを確認した。 2)研究成果の発表:平成21年~22年度の間に実施した現地調査の成果は「拡張型技術受容モデルを用いた違法ダウンロード行動のメカニズム~アジア中間層の日本ゲームソフト利用を事例として~」、「内発的外発的動機によるネットユーザーの違法ダウンロード行動~シンガポールの事例研究」、「日本製ソフトコンテンツの違法ダウンロード行動パターンの国際比較分析」と題した論文にまとめた。 1本目は、拡張型技術受容モデルを展開した違法ダウンロード行動モデルを作成した。知覚された利便性(perceived ease of use)と知覚された楽しさ(perceived enjoyment)などの非価格要因がアジアのインターネット・ユーザーの違法ダウンロード行動に大きな影響を与えていることが確認された。 2本目は、シンガポール調査からインターネット・ユーザーの違法ダウンロード行動に影響を与える諸要因を整理し、内発的外発的動機(extrinsic and intrinsic motivation)という概念枠組みを提示した。 3本目は、違法ダウンロードを体験したユーザーを対象とするタイ・台湾・シンガポールの3カ国調査結果を比較分析した。違法ダウンロード行動パターンを分析し、各国の違法ダウンロードパターンと特徴を明らかにした。 最後に、ベトナム(ホーチミン)の現地調査については、現在、調査内容を分析中である。
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