研究概要 |
・会計方針の変更と株式収益率の関係について,先行文献を基礎に分析した分析を継続して行った。すると,一部の会計方針の変更(減価償却方法,棚卸資産評価方法の変更)において,変更額と株価収益率が関係しているとみられる結果が得られた。これは先行研究と異なる結果であり,市場が会計方針の変更について反応していることを意味する。ただし,変更によって濃淡があり,有意水準はそれほど高くなく,さらなる分析の精緻化にともない結果が変動する可能性があるので,慎重な解釈が必要である。 ・さらに本年度は2009年3月期のデータ及び2010年3月期のデータを検討した。 ・2009年3月期の特徴は,これまで多くの会計方針の変更事例となっていた役員退職慰労引当金の計上が,強制となったため,以前よりも激減していることである。それに伴い,会計方針の変更の件数が減少しているほかは,2008年以前と違いはない。 ・2010年3月期の特徴は,全体的に件数が大きく減少したことである。2008年以前は200件前後の変更数が報告されていたが,2010年3月期は100件前後に減少した。棚卸資産の評価基準及び評価方法の数が前年と同水準である以外は,全般的に各種の変更が減少している。この原因については現在のところ不明であり,今後の検討が必要である。
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