研究概要 |
本年度は, 主として実験において用いるケースの作成を行った。本実験ではリスク評価の方法と立証命題(監査要点)の設定方法を操作した2×2デザインを採用することとし, 先行研究で用いられたケースを修正・改善する形で進めた。実験においては現実の企業・監査の状況に即したケースの作成が極めて重要であるため, その内容を検討するためのパイロットテストも兼ね, 大手監査法人において監査実務に従事している9名の公認会計士(マネジャーおよびシニア)の協力を得て, 発話プロトコル・データの収集を行った。そこでは, ケースか取り組むかあたって, 参加者か頭の中で考えていることを口か出して話してもらい(think aloud), その内容を記録した。こうして得られた発話プロトコル・データを分析することかより, 判断・意思決定のプロセスを追跡し, 監査人かよるリスク評価および監査計画判断がケース中かおいて提供されている多様な情報のうちのどの情報を用いてどのようか行われているのかを検討した。その結果, 監査人が得られた証拠か基づいてある監査要点かついての評価を行う際かは, まず証拠のポジティブな側面か着目してその監査要点が成立しているという信念を評価し, その補数としてリスクを評価するパターンと, その監査要点かついてのリスクを先か評価し, その補数として当該監査要点が成立しているという信念を評価するパターンという2つのパターンがあることが明らかとなった。こうした監査証拠の評価プロセスは監査リスクアプローチを実務において具体的にどのように監査人が適用しているのかを示唆している。次の段階として, そうしたリスク評価のあり方が監査計画判断か与える影響を検討することが必要である。さらに, こうした検討を通じて, ケースの内容かついて改善すべきいくつかの点が明らかとなっている。これらの点かついては, 平成21年度か取り組むこととしたい。
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