研究概要 |
研究初年度である本年度は, 交付申請書に記載した課題について, まず, 我が国の広域自治体病院におけるBSCの取り組みに関して, 新潟県立病院の取り組みを分析し, BSCの意義と特徴, さらに今後のBSC導入における課題について, 日本管理会計学会2008年度全国大会で研究報告を行った。 新潟県立病院におけるBSCの導入は, (1)戦略マネジメント・システムとしての位置付け, (2)戦略マップとBSCを一体化した「マネジメントシート」, (3)顧客の視点を最上位におく, (4)院長シートー部門長シートーセクション長シートへのカスケード, (5)縦展開アプローチ, (病院BSC(院長シート)を基に組織下位へ展開), (6)院長シートにおける戦略の作りこみを重視, (2)年1回のBSCシートの見直し, といった特徴を有している。一方, BSC導入における課題としては, (1)病院局の病院運営に対する病院側の不信感(2)戦略策定についての課題(3)下位シート(部門長シート・セクション長シート)への展開についての課題が挙げられる。 また, 広域自治体病院におけるBSC導入の先駆者である三重県立病院に聞き取り調査を行い, 病院BSCの現状と課題についてお話を伺った。三重県立病院では, (1)BSCそのものは定着しており, KPI(重要業績評価指標)も整理されて指標が安定してきている, (2)庁長が四半期ごとにレビューを行い, BSCに基づき, 院長に聞き取り調査を行っているため, 各病院はBSCを意識しなければならない, (3)各病院は四半期ごとに実績を測定し, 自己評価を行う, といったように, 総じてBSCマネジメントは有効に機能しているという自己評価であったが, 一方で, 昨今の外部環境の変化, 特に, 医師不足と診療報酬のマイナス改定によって, 県立病院の経営は深刻な状況に陥っており, BSCによる内部管理だけでは限界があり, 病院再編という選択肢についても検討を進めているとのことであった。
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