・原価企画の事例研究は、1990年代初めに盛んに行われたが、それ以降の時代の原価企画システムの進化を扱った研究は少ない。また、原価企画に関する既存研究の多くは、個別プロジェクトを分析対象としており、複数プロジェクトを分析対象とした研究は少ない。そのため、1990年代後半以降、原価企画システムがどのように発展してきたかについて、プロジェクト間関係にも着目し、自動車企業ヘインタビュー調査を行い、以下の研究を行った。 ・トヨタ自動車株式会社における個別プロジェクトを対象とした原価企画システムの進化に関して、「自律的行動」などの概念を用いて分析を行った(基盤(A)課題番号18203027で得た理論的枠組みを用いたため、当該研究の成果として報告)。 ・原価企画・製品開発管理領域の既存研究と、トヨタ自動車株式会社の事例をもとに、複数プロジェクトを対象とした原価企画システムの進化に関する考察を行った。具体的には、既存研究により部品・プラットフォーム標準化のメリット・デメリットを把握した上で、メリットを享受すべく部品等標準化を促進し、かつ、デメリットを克服しうる管理会計システムはどのように設計されるべきかについて、事例を基に明らかにした(本年度学会発表、09年度雑誌論文掲載)。 ・原価企画システムの進化のあり方とその影響要因の関係をより明確に把握するためには、複数企業の事例を用いることが望ましいと考えている。それゆえ、日産自動車株式会社その他自動車企業の事例収集を行い(日産自動車株式会社へのヒアリングは昨年度2回実施)、相違点の認識に努めた。それらを効果的に説明しうる理論的枠組みを探索している。
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