交付申請書の計画に沿って、以下の研究を実施した。1)従来の原価企画研究は主に個別プロジェクトを分析対象としてきたため、プロジェクト間関係を視野に含めた研究を行った。プロジェクト間の部品やプラットフォームの標準化を効果的に行うために、原価企画組織・プロセスがどのように進化してきたかについて、トヨタをリサーチ・サイトとしたヒアリング調査に基づき明らかにした。既存研究で論じられてきた標準化のデメリットをいかに克服しているかについて、事例に基づき明らかにした点が本論文の貢献である。2)効果的な製品開発活動を可能にするトータル・システムとして、原価企画以外の管理会計システムを分析視野に含め、ABC、Total Cost of Ownership等と原価企画との関係を論じた既存研究をサーベイした。但し、本年度ヒアリングしたリサーチ・サイトでは、これらのシステムが用いられていなかったため、成果公表には至っていない。3)1990年代のトヨタの原価企画の進化のあり方について、部門間インタラクションの観点から考察した論文を公表した。4)相互依存性の複雑性の増加に対応する原価企画の進化のあり方に関する学会報告を行った。近年の日本自動車企業の製品開発において相互依存性の複雑性が増加していること、1990年代以降のトヨタの原価企画プロセス・組織が複雑性対処の仕組みを内包していることを既存文献とヒアリング調査に基づき明らかにした。複雑性対処の仕組みを内包した原価企画プロセス・組織がどのような理由で導入されたのかについて、学会報告以降、明らかにする取り組みを行った。
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