本研究の目的は、(1)経営者は業績予想の発表を通じて、証券アナリスト予測を自らに有利になるよう誘導しているかどうか、(2)経営者が発表する業績予想の修正に対する証券アナリストの反応を明らかにするの2つである。時間の制約もあり、この2つの目的を完全に達成することができなかったが、経営者予測の修正の特徴を明らかにすることができた。 本研究は、2004年3月期から導入された四半期決算短信を取り上げ、四半期決算短信の導入が業績予想に与える影響を明らかにした。四半期決算短信の導入によって、経営者は3ヶ月一回業績予想を見直すことになった。業績予想の修正のタイミングの精度はどうのように変化したのかを分析すること通じて、四半期決算短信は業績予想の有用性を高めているのかを調査した。 四半期決算短信が導入された直後の3年間の業績予想とその修正の乖離率(予想値と実績値との差額)を計算し、分析した結果は以下の通りである。 (1) 第2四半期決算短信が発表されるまでの期間が最も長い。 (2) 多くの企業は第2四半期で業績予想の修正を発表している。 (3) 業績予想は楽観的な傾向にあるものの、年末に近付くにつれて精度が高くなっていく。 (4) 業績予想の修正もしくは実績値はその以前に開示される予想値を上回る傾向にある(つまり、予想値は上方修正されていサンプルが最もい)。 以上の結果から、四半期決算短信が導入されたにもかかわらず、多くの経営者は第2四半期に業績予想の見直しを行っている。四半期業績予想が挙表されるたびに精度が高くなっていき、経営者は有用な予想情報を提供しているといえるが、最初に保守的な予想を開示しておいて、次第に予想を上方修正していき、市場に対してグッド・ニュースを演出していることも考えられる。この可能性を明らかにするため、さらに本研究を続ける必要がある。 今後はアナリスト予想を検証データに加え、アナリストの反応を検証し、経営者が業績予想を通じてグッド。ニュースを演出しているかどうか、アナリストはこのような経営者の演出を見透かしているかを検証し、前述の本研究の目的に達するため引き続き、研究を進めていきたいと思っている。
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