平成21年度は、診療プロトコル開発活動を通じた医療サービス原価企画に関するアンケート調査を実施し、DPC対象病院全体としての診療プロトコル原価企画の現状を把握した。診療プロトコル原価企画の出発点となる包括出来高差を把握し、他病院の診療方法とのベンチマークをしつつ原価企画をし、その活動の結果評価をしている病院がかなりあることが判明した。またそうした状況は公的病院か私的病院かでも多少異なることが分かった。またある公的病院グループに限定したアンケート調査も実施し、DPC関連病院か否か、DPC対象病院かDPC準備病院かによる診療プロトコル原価企画活動の違いを分析し、DPC包括払い制度が医療サービス原価企画に与えた影響がいかに強いかを明らかにした。さらに、両アンケート調査から、診療プロトコル開発への医事課等職員の積極的な参加が、医療サービス原価企画活動の本格化には重要であることも明らかになった。 またインタビューによる診療プロトコル原価企画の詳細な実態調査も実施した。後発薬の採用など変動費的項目に対する原価企画が中心であり現状では労務費などの固定費部分への取り組みは少ない点や、あくまでも出来高換算収益ベースの取り組みである点、原価企画活動支援ツールの整備がまだ不十分である点などの課題を抱えていることが判明した。さらに先駆的な病院における事例調査も実施し、診療プロトコル原価企画活動を支える組織体制の整備の重要性を明らかにした。加えて、ある医療法人の上級管理者を集めて原価企画活動プロジェクトを行ったが、当活動を有効に遂行するための支援情報システムに大きな課題があることが判明した。
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