平成22年度は、診療プロトコル開発活動を通じた医療サービス原価企画を支援するツールに関するアンケート調査を実施し、支援ツールの現状を把握するとともに、狭義の診療プロトコル原価企画を実施している病院か否かによる状況の違いも分析した。その結果、行為別原価データベースなどはまだ十分に整備されていないことが判明したが、狭義の診療プロトコル原価企画実施病院では、相対的にはすべての原価企画支援ツールが整備されていることもわかった。また狭義の原価企画実施病院群と非実施病院群に区分したうえで、両病院群における医療の質とプロセス効率性と採算性という業績を比較することを通じて、医療サービス原価企画活動の病院業績に与える影響を評価した。その結果、医療サービス原価企画はプロセス効率性や採算性に影響をもたらすことなく医療の質を向上させることが明らかになった。さらにこうした医療サービス原価企画活動がもたらす効果の背景にある質と効率性・採算性との相互関係に関する分析を実施した。その結果、医療界において伝統的に考えられてきた質と効率性・採算性との二律背反関係は必ずしも成立せず、むしろ質と効率性・採算性は無相関であるか相互支援関係(質が高いと効率性・採算性も高い)にあることが判明した。 また機能を異にする複数の施設事業を運営する医療法人グループへのアンケート調査及びインタビュー調査を通じて、急性期入院医療部分に限定された診療プロトコル原価企画だけでなく、より幅広い価値連鎖全体を対象とした医療サービス原価企画が、複合体度が高く連携戦略を重視している法人などいくつかの属性を有する法人を中心として、登場しつつあることを明らかにした。
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