研究概要 |
本研究は, FASBとIASBとの共同プロジェクトであった企業結合プロジェクトにおいて, ある種のダイバージェンスが生じることとなった原因, すなわちFASBが「理論的正しさ」を全面に打ち出した基準設定活動を行った原因が, FASB自身による「組織存続の危機」に対する認識によるものではないか, という仮説を定性的および定量的な観点から検証することとを目的としたものである。本研究における定性分析は, 当該基準設定にあたり, FASBのボード・ミーティングにおいてどのような論理が展開され, どのように意思決定が行われたのか等の議論プロセスを, 議事録等を辿る手法で明らかにする。また, 定量分析は, 当該議事録をもとに, 社会ネットワーク分析の手法を用いて, FASBメンバー間のネットワーク構造を明らかにする。かかる手法により, 当該プロジェクト全体のネットワーク構造および通時的分析によるネットワーク構造の変化を明らかにすることを目的としている。 当初の計画では, 平成20年度に, FASBに出張し, 入手されていない資料の収集およびFASBメンバーないしスタッフへのヒアリング調査の実施さらには資料整理と当該プロジェクトの全体像の把握に努めることを予定していた。 当該年度の実績としては, 平成20年9月に渡米し, 資料収集およびFASBの計画・支援DirectorであるBielstein氏へのヒアリング調査を行うとともに, 当該年度以降実施する予定である定性分析および定量分析のための資料整理を行った。この資料にもとづき平成21年度では, 学会報告(採択済み)および学会誌への投稿を予定している。また, 平成20年8月には, 本研究の仮説, すなわち会計基準設定機関は「組織存続の危機」に対する認識によって異なる基準設定行動を採る可能性がある, ことをFASBとIASBの全部暖簾法の策定議論に焦点を当てて示した学会報告を行った(学会報告後, 学会誌への投稿を行い, 採択済みの連絡を受けた。発行年月日等は不明)。
|