研究概要 |
本研究は,FASBとIASBとの共同プロジェクトであった企業結合プロジェクトにおいて,ある種のダイバージェンスが生じることとなった原因,すなわちFASBが「理論的正しさ」を全面に打ち出した基準設定活動を行った原因が,FASB自身による「組織存続の危機」に対する認識によるものではないか,という仮説を定性的および定量的な観点から検証することとを目的としたものである。本研究における定性分析とは,当該基準設定にあたり,FASBのボード・ミーティングにおいてどのような論理が展開され,どのように意思決定が行われたのか等の議論プロセスを,議事録等を辿る手法で明らかにすることを指す。また,定量分析とは,当該議事録をもとに,社会ネットワーク分析の手法を用いて,FASBメンバー間のネットワーク構造を明らかにすることを指す。かかる手法により,当該プロジェクト全体のネットワーク構造および通時的分析によるネットワーク構造の変化を明らかにすることを目的としている。その上で,当初,平成21年度において,前年度に実施した米国でのヒアリング調査および入手した資料のデータ整理とともに,プロジェクト全体に対する定量分析の実施を予定していた。 平成21年度の実績としては,定量分析の一環をなすプロジェクト全体のネットワーク分析に関する学会報告(International Symposium of AROB)を行うとともに,現在,同学会学会誌(AROB Journal)に投稿中である。また,定量分析の一環をなす通時的分析に関する学会報告(日本IR学会)を行うとともに,学術雑誌(『企業会計』)に投稿した(近刊)。
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