研究概要 |
本研究は,FASBとIASBとの共同プロジェクトであった企業結合プロジェクトにおいて,ある種のダイバージェンスが生じることとなった原因,とりわけFASBが「理論的正しさ」を全面に打ち出した基準設定活動を行った原因が,FASB自身による「組織存続の危機」に対する認識によるものである,という仮説を定性的および定量的な観点から検証することとを目的としたものである。本研究における定性分析とは,当該基準設定にあたり,FASBのボード・ミーティングにおいてどのような論理が展開され,どのように意思決定が行われたのか等の議論プロセスを,議事録等を辿る手法で明らかにすることを指す。また,定量分析とは,当該議事録をもとに,社会ネットワーク分析の手法を用いて,FASBメンバー間のネットワーク構造を明らかにすることを指す。かかる手法により,当該プロジェクト全体のネットワーク構造および通時的分析によるネットワーク構造の変化を明らかにすることを目的としている。平成22年度においては,ネットワーク構造の変化を明らかにするために,入手した資料のデータ整理およびプロジェクト全体における定量分析を実施する予定であった。 平成22年度の実績としては,定量分析の一環をなす,当該プロジェクト全体におけるFASBメンバーの投票行動にもとづくネットワーク分析および同メンバーの発話回数にもとづくネットワーク分析を実施し,一部は掲載され(投票行動については『企業会計』に,発話回数については『AROB Journal』に掲載),一部は学術雑誌に投稿を予定している。
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