研究概要 |
研究初年度である平成20年度は、先行研究のレビュー、仮説め導出、データベースの構築などを実施した。 第一に、代表的な研究であるLarcker and Richardson (2004) は、2000年と2001年の5,103社/年を対象に、監査の独立性の代理変数である監査報酬と利益の質の関連性を実証的に分析し、脆弱なコーポレート・ガバナンスの場合に会計監査の役割が増大することを発見している。ここではすなわち、コーポレート・ガバナンスと会計監査には補完的関係性がある可能性が指摘される。 第二に、上記をはじめ、内外の研究および制度的、社会的な側面に対する考察を行い、日本企業の会計監査とコーポレート・ガバナンスが利益の質へ与える複合的効果を検証するにあたってのフレームワークと検証仮説について検討を行った。その結果、相乗仮説、補完仮説、相乗仮説、相互無関係仮説の4つの仮説が導出された。当該仮説の検証にあたって、多段階・多年度のデータベースの構築が必要となることが明らかとなった。 第三に、第二で明らかになった事を踏まえ、これまで筆者が構築してきた会計監査関連データベースとコーポレート・ガバナンス関連のデータベースを統合して本研究用のデータベース構築を行った。会計監査関連データベースは、現在構築しているものを本研究用に調整した。またコーポレート・ガバナンスについては、日本経済新聞社のNEEDS- Cgesを購入し、両データベースの統合作業を行っているところである。 また課題遂行の一環として、監査報酬プレミアムに関する実証分析を行い、日本会計研究学会、第67回研究大会にて発表した。分析の結果、大手監査法人とその他監査人の間には報酬プレミアムが存在し、それは両者の監査コスト、独占プレミアム、リスク対応度などが反映されている可能性が示唆された。本研究は監査の質を解明するにあたり、重要な示唆を提供してくれるものである。
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