研究概要 |
本研究課題では,わが国公開会社において買収防衛策導入の機運が高まっていることを受け,その防衛策導入が市場(株主)からどのような評価を受けるかを実証的に検証することにあった.すなわち,防衛策導入が経営者に対する株主からの規律付けを希薄化させ,非効率的な経営をおこなうとする(エントレンチメント)のか,逆に短期的業績を志向する株主から守られることによって中長期的な経営計画が策定されて業績向上に寄与するのか,という点を明らかにしようとした. しかし,多くの企業が買収防衛策を機械的に導入しその効果を統計的に測定することが困難になったことや,結果として買収防衛策導入時の株価リターンに有意な変化がないことを確認する先行研究が発表されたことから,当初の計画通りの研究遂行は困難かつ意義が薄いと判断した. そのため,あらためて経営者と株主との関係という点について検証することとした.具体的には,経営者と株主が直接対話するほぼ唯一の機会である定時株主総会を取り上げ,それを経営者の株主に対する態度の発現と考えた.充実した定時株主総会の前提は,経営者側の意識と株主側の必要性の両者がそろうことである.充実した定時株主総会が開催されているということは,株主に対する経営者の真摯な態度の表れであり,日ごろのディスクロージャーなど他の場面についてもその影響があるものと考える. そこで,株主総会の前後においてディスクロージャーの程度がどのように変わったかについて,いわゆる市場モデルの決定係数の変化との関係を明らかにした.香港理工大学のLouis Cheng教授と共同研究を進め,現在までに報告原稿が完成したところである.
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