本研究課題は、これまでの組織間管理会計研究が購買企業側の視点に偏重している点や、供給企業での実態や貢献が限定的にのみ記述されている点といった、現時点での研究上の限界を克服することを基本的目的とし、こうした基本的な目的をふまえて、原価管理で見られる組織間での協働、協働が供給企業にもたらす貢献、協働に対する影響要因を、供給企業側の視点からインタビュー調査や質問票調査を利用して解明することを、研究期間内での具体的目標としている。初年度に当たる本年では、組織間管理会計に関する既存研究と基礎理論の文献収集とその内容調査、および、テータ分析にかかわる情報の収集を中心に本研究課題を進めてきた。また、これらの過程で同様の研究テーマに興味を持つ国内、および海外の研究者との意見交換を行い、本研究課題の実施可能性と管理会計研究の領域への貢献可能性について検証した。具体的には、(1)基礎理論として一般的に利用される取引コスト経済学だけでなく、資源ベースアプローチが今後の研究で有効になることや、(2)組織間関係で広く利用される信頼が独立変数としてではなく、媒介変数として利用する可能性があること、などである。さらに、大阪府下の製造企業一社に関与し、生産システムや顧客対応に関する情報を収集した。これらは、本研究課題の目的を達成する上で有益であると考える。 なお、本研究課題に関連する研究成果は、研究論文として出版しているほか、学会においても報告済みである。 今後は、本年度の研究成果を踏まえて、日本企業を対象とした予備調査(質問票調査)を広く実施する予定である。また、国内だけでなく海外の研究者とも継続的に連絡を取りながら、本研究課題の達成とより豊富な成果の提供を目標として、研究を進めていくことを計画している。
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