本研究では、日本企業に特徴的な株式所有構造と会計情報との関係をめぐる問題に、さまざまな観点からアプローチを試み、3つの発見事項を導いた。第一に、非合理な投資者が存在するもとでは、会計情報は体系的に操作される可能性がある。持ち合いをはじめ日本企業に特徴的な株式所有のあり方も、このような操作を助長する可能性がある。第二に、資本市場が異常な価格変動に晒されているときには、残余利益モデルなどの評価モデルの有効性に疑問が生じる。第三に、メーカー同士が競合するサプライチェーンにおいて、メーカーがサプライヤーの株式を部分所有する場合に、サプライヤーは自身が供給する中間財の製造コストを開示する可能性があることが示された。
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