平成20年度の研究目的は、(1) リスク社会論・監視社会論をはじめとした地域セキュリティの基本的な視角についての文献レビュー、(2) インドネシア語・オランダ語歴史資料の収集、(3) インドネシアへの支援についての国内研究、(4) 警察民主化重点地域の活動についての資料収集であった。 (1) 文献レビューについては、近刊の共著(平成21年度公刊予定)として、リスク社会論と監視社会論についての議論をまとめた論考を書き上げた。実際の地域セキュリティ活動を東南アジアの文脈に即して理論的に整理したものはこれまでなく、新たな試みとして提示できる。(2) インドネシア語・オランダ語歴史資料については、京都大学東南アジアセンター(平成20年10月の研究会時)、国立ウダヤナ大学(平成20年12月バリ調査)、国立ライデン大学(平成20年8月オランダ調査・別経費使用)にて資料収集を行った。資料の読解・分析・整理といった作業は平成21年度に引き続き行う。(3) インドネシアへの地域セキュリティ支援についての国内研究に関しては、国際移住機関をはじめ、現在、調査対象者・資料の選定と把握・調整を行っており実際の調査は平成21年度に繰り越されることになる。(4) バリ島では平成20年12月調査時に、デンパサール市の広域地方警察にて調査対象・資料選定を行った。この調査の内容をシンガポールのフォーラムにて発表し、高い評価をうけ、Asian Journal of Social Scienceへの掲載依頼をうけた。さらに、平成21年3月にジャカルタに滞在し、ジャカルタ日本人会を起点として調査対象・資料の選定を行った。ジャカルタでの調査活動は平成21年度に調査対象を限定したかたちで実施される。
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